森林療法とメンタルヘルス
日頃、体より頭を使いすぎていると、知らず知らず思考や不安にとらわれがちになります。
時に、自然の中で五感を開き、心のバランスを整えたいものですね。
世界中どこにいっても”自然”は癒しの上位です。
日本ホリスティック協会会長であり、日本森林協会の理事でもある降矢英成先生を勉強会にお呼びして、森林療法とメンタルヘルスについて伺ったのでまとめました。
はじめに
「森林浴」という言葉が”心地よい”とか”癒し”として広く知られるようになっていますが、 近年、さらに発展して「森林療法」という概念が生まれています。
特に、メンタルヘルス不全の人がふえている現状において、自然、森林を活用した取り組みである「森林療法」が注目されています。その効果として、自律神経系、内分泌系、免疫系への影響が起こることが種々の研究によりわかってきてます。
メンタルヘルスへの効果としては、主に自律神経系への影響が大きいとされています。今回は、メンタルヘルスへの森林療法の影響について紹介するとともに、実際に近隣のフィールドに行ってセルフケアが行えるようお伝えします。
森林浴とは
森林に入り、樹木の香気を浴び、精神的な安らぎと爽快な気分を得ること。
森林療法とは
健康のために森林を活用すること。(NPO法人日本森林協会による)
健康:健康増進、病気の治療、福祉・療育。
森林の活用例として、スポーツ・レクリエーション(ランニング、歩行、登山、キャンプ、カヌー)、農業体験、林業体験、キノコ狩り、木工、染色、クラフトづくり、自然観察、学習など。
心と体のストレス反応
ストレスが起こると自律神経、ホルモン、免疫などに影響します。
副腎皮質からステロイドホルモン分泌が増加。→血圧、血糖などの上昇
交感神経からアドレナリンの分布が増加。→血圧、心拍の上昇
特に自律神経への影響が強いですね。自律神経とは内臓や血圧などを無意識のうちに自動的に調節している神経です。
交感神経は、緊張・興奮・闘争か迷走。副交感神経は休養・リラックスなどに関与。
この働きが悪くなったりバランスが崩れると、自律神経失調症や高血圧症など生活習慣病につながりやすいといわれています。
森林の効果
・ストレスホルモンが減少
40分の森林浴で唾液中のコルチゾールというストレスホルモンが減少。
・生理的にリラックス
森林浴時には脳の前頭野の活動が鎮静化し、交感神経の活動が抑制され、拡張期血圧も優位に低下。
・ナチュラルキラー細胞が活性化
森林の植物から揮発性芳香物質(フィトンチッド)がでることで、鎮静効果、やすらぎ、興奮・眠気覚まし、α波の増加作用があります。
人の恒常性を維持する、”ホルモン”、”自律神経”、”免疫”がすべて関与してます。
森林の快適性
1.視覚の快適性
美しい風景や景観の構成要素(樹木、草花、野鳥、蝶なども含まれる)
2.聴覚の快適性
森の静けさ、風の音、小川のせせらぎ、小鳥のさえずり、虫の声など
他にも嗅覚や触覚もありますが、目に見えないフィトンチッドの影響も受けています。
森林セルフケア
森に行って自然に無理なく自分自身をケアする健康法。さらには、よりよく生きる力を引き出すエンパワメントの効果もあり。
難易度によるコース分類として
A)難易度が最も軽いコース。傾斜は5%程度以内、時間は30分程度。
B)中間的なレベルのコース。心臓、足腰に問題がない人なら適度な運動になるコース。
C)健脚向きのコース。アップダウンが多く、山道で距離も長いコース。
森林が深いと、自然に対して畏敬の念を感じるね
いきなり山道より、身近な神社や公園かな
森林療法するうえでのポイント
・自然を散策するのに適した服装で
(長袖、長ズボン、帽子、スニーカー、水分)
・ビジターセンターに立ち寄ろう
フィールドの現在の情報(気候、コース、動物、マップの入手)
危険動植物
蛇(マムシ):湿地などでみだりに奥深く入り込まない、岩陰に手を入れない。
スズメバチ:黒い服を着ない、香水は薄く、数匹いたら避ける。
熊:鈴の持参、出会ったら威嚇しない、後ろを振り向かない。
ウルシ:つる植物・紅葉にみだりに触らない。
森林散策(実践)
・森林に入る入口で、目をつぶって視覚以外の感覚を感じます。
人は視覚に7割たよっているため、視覚遮断することで他の感覚を上げます。聴覚では風に吹かれた草の音や虫の声に気づきませんか?嗅覚はわかりにくいため、片鼻をおさえてもう片鼻で感じます。
・木洩れ日の下で呼吸法
体を回旋して、たらした両腕を振ります。膝もやや曲げて体ごとふり、手がつるのように体に巻き付くようにすることで、体がほぐれます。
へそに手を当てて、お腹がへこむように息を吐き、お腹が膨らむように息を吸います。
・森林を観察しながら散策
葉っぱはどんな形をしていますか?杉とひのきはにていますが、杉の葉っぱはトゲトゲして、ひのきはうろこ状です。植物の違いに気づくと、森に親近感がもてるようになります。時に大道から小道に足を運び、冒険心をくすぐりながらいってもいいでしょう。
リラックス目的の方もいれば、リフレッシュ目的の方もいるでしょう。
どちらも満たそうとすると、帯に短したすきに長しになってしまうかもしれません。
まとめ
・森林を健康に利用したのが森林療法。
・森林療法は、人の恒常性であるホルモン、自律神経、免疫全てに影響する。
・五感を感じて呼吸法。
治療とは、一過性では意味がありません。継続するにはいかに主体性を引き出せるかが重要です。
そのためには森林を身近に感じ、心地よい感覚の体験からはじめたいですね。
自然からかけなはれた現代だからこそ、昔の生活に戻るのではなく、意識を少し自然に寄せてみてはいかがでしょうか?