稲葉俊郎医師「愛を受けるために人は弱く生まれた」
稲葉敏郎医師を知っている方も多いと思います。
芸術、文化、自然などいろんな分野の方とコラボされており、医療関係では、次世代のニューリーダーといわれています。
歌手のUAさんやハナレグミさんなど、医療を越えていろんな方とコラボしております。
医療には答えのないテーマも多く、一生を追求できる”医道"のようです。
そんな哲学を支える本のひとつに、東京大学医学部付属病院循環器内科である稲葉敏郎先生の”いのちを呼びさますものーひとのこころとからだー”があります。
2019年4月に”稲葉俊郎先生に学ぶ「○○と統合医療」”というテーマで、稲葉俊郎先生をお呼びして、2日間にわたり勉強会を行いました。
先生は、音楽、絵画などさまざまなジャンルにおいて医療との接点を模索されており、今回は芸術、文化、自然などと統合医療の関係性についてのお話を頂いたのでまとめました。
いのちの歴史
お年寄りとお話しすると、戦争体験など、身内にも話せないけど、話したい暗い過去がある。
ある人は当時7歳の子供だったが、急に大人に投げ飛ばされた直後、その大人のところに爆弾が飛んで助かったと。
助けてくれた大人や両親はその爆弾で皆死んでしまった。
いのちの歴史は常に壮絶。生き残りをかけて今がある。
ずっと途切れることなく繋がり続けたいのちの歴史の果てに今の自分達がいる。
その体には宇宙と生命の歴史がすべてつまっている。
最高にして最大の情報が”身体”に秘められている。
からだの歴史
胎児の最初の細胞は、内側が植物で、外側が動物の要素。
自然と共鳴しているのが植物性臓器(栄養と生殖)。心は自然。
一方、自然と反してまでも動くのが動物性臓器(感覚と運動)。頭は自然に反しても生きようとする特性がある。
”仕事に行きたい””けど”行けない”んですという方は、”頭”と”心”が逆の結論になっているので注意が必要。
意識は呼吸のようにリズムを持つ。起きている時は、外に意識がいく覚醒の世界。でも生命は内にある。
外に意識が偏れば、内に意識をおく。内に意識が偏れば、外に意識をおく。2つをつなぎ、バランスをとるのが個々の課題。
体調悪いと呼吸が浅くなるよね
深い呼吸で波長を生命のリズムに合わせることが大切だね
わたしの歴史
同じことが起きても、皆反応が違う。泣く人、怒る人、笑う人、止まる人・・。
その人の歴史に関係がある。どう乗り越えてきたかの学習が影響するため。
1歳半から自我が芽生え、思い通りにならないことを何とか受け入れていく過程。そこで乗り越えるパターンがつくられる。
頭が痛いとか、症状は体の言語表現としてでてくる。医療のプロは、体の言葉を読み解き、本人に伝えられてるかが大切。
現代は分断の世界といわれる。だからこそ、繋ぐことが大切。
たとえば”平和を願うこと”も一部の人だけの必要はなくて、関係をもってつないでいくことが大切。
医療の歴史
古代アテネに古代の人がわざわざ行ったのは、夢を見るだけで元気になる場所だったから。アスクレビオス信仰では、温泉、自然、スポーツ、演劇・・すべて統合されていた。
今、情報化社会といわれるが、自然のほうがよっぽど情報量が多い。
人間の意図が入っている情報により、いろんな人の欲望や想いが入り、何を自分自身が感じているのかわからなくなってしまう。
安心できる場、安全な場がない世の中で、常に緊張してしまう。たとえばたき火を囲んで話すなど、自分の心をひらく場が重要。
やってから考えるでよい。
やるのは体。頭が主だと考えてやらなくなる。
子供と同じく、転んでも転んでも歩く。子供から生き方を学ぼう。
まとめ
古くから心身一如、身土不二という言葉があるように、“心”と“体”は一体であり“土(自然)”のリズムと共鳴します。
しかし、動物性臓器である“頭”は自然に反してまでも動く性質をもつため、時に頭は、心・体と不調和になりがちです。
頭(意識)が外の世界に偏れば、内の世界を抑圧して、身心に症状としてあらわれたり、人間関係にあらわれます。逆もまたあり、外と内のバランスをとるのが個々の課題です。
そんな外と内をつなぐ場所にイメージの世界があり、自分の内的イメージを中心にそえて生きていくことは、自分らしく生きていくことに繋がります。
医療には本当の心の声を聴き、全体性を回復する役目があり、芸術や道、美の世界に叡智が秘められているようです。
人生の一番大事なことは、「人は必ず誰かを頼らなければ生きれなかったこと」。
愛を受けるために、人は弱くうまれてきたようです。
私たちの社会は、表面にある違いを強調させて互いを分離させていくことよりも、深層にある共通性を発見して、お互いの関係性を結ぶことが求められております。
これまでいろんな文化を受け入れてきた日本だからこそ、そんな社会を実現できるかもしれませんね。